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1on1の目的って何だろう…こんなときどうしたらよいですか

  • 執筆者の写真: OVER20 Manager
    OVER20 Manager
  • 2 時間前
  • 読了時間: 7分

1オン1を丁寧にやるように言われたけど、何を意識したらよいのかわからないこんなときどうしたらよいですか


1on1が形骸化し、面談する側/受ける側(以下、便宜上、メンター/メンティという)双方にとって時間を浪費してしまっていることは、実はよくあることです。

その背景には、「どこまで踏み込んでいいのか」「パワハラだと思われたらどうしよう」と必要以上に構えてしまうことで、本来意識を向けるべきところ以外で気を遣い、結果としてメンティの本音が引き出せないまま時間だけが過ぎてしまう──。


けれど実は、この“難しさ”の正体こそ、組織が成長するためのサインです。

1on1の目的は、相手を変えることではなく、関係性の中に成長を起こすこと

制度やマニュアルの問題ではなく、対話を文化として持つ組織へと進化する契機となります。

本稿では、メンタリング理論と現場実践の両面から、「メンター/メンティ双方にとって有意義な1on1の在り方」について考え、“信頼を育む組織づくり”のヒントを紐解きます。


1.難しさの背景にあるのは「関係性の再設計」の要請

かつてのマネジメントは、「指導・評価・管理」を軸に成り立っていました。

上司が方向性を示し、部下がそれに応える構造です。しかし、価値観・ライフスタイル・働き方が多様化した現代では、一方的な“指導型”の関係性は機能しにくくなっています。

1on1で「社員との距離がつかめない」と感じる背景には、この“指導から共創へ”という構造的転換が潜んでいます。

つまり、“難しさ”とは、関係性を再設計するタイミングが来ているというサインなのです。


2.「理解」から「共鳴」へ─1on1の目的を再定義する

多くの1on1は、「相手を理解する」ことをゴールに置きがちです。けれど、理解は“知識”の領域にとどまります。真の関係性を育むには、理解を超えた「共鳴」が必要です。共鳴とは、相手の立場や感情を感じ取り、意味を共有すること。それは「あなたを分かろうとする」ではなく、「あなたと感じ合う」という姿勢です。

メンタリングにおいては、この“共鳴”こそが信頼を生み、自発的な成長や行動変容を促す起点となります。


3.メンタリングの三原則 ― 信頼・尊重・共感

①信頼―評価ではなく、期待で関わる

信頼は、相手の可能性を前提に関わる姿勢から生まれます。

1on1では、「どうだった?」と過去を問うより、「次、どんなことを試してみたい?」と未来への期待を投げかけることが、信頼残高を増やす第一歩です。


②尊重―違いを“受け入れる”ことが文化になる

性別・年齢・価値観・働き方。

違いを調整するのではなく、そのまま受け入れる

尊重とは、「あなたはあなたでいい」と伝えること。

この感覚が、組織を多様性から強さへと導きます。


③共感―感情に意味を見出す

「分かるよ」ではなく、「そう感じたことに意味がある」と受けとめる。

共感は“感情の正しさ”を判断しない姿勢です。

これが心理的安全性を育て、多様な価値観を持つ社員が力を発揮できる土壌になります。


4.日常の関わりが、1on1の質を決める

信頼は、1on1の場でつくるものではなく、日常で育てるものです。

日常の一言・一瞬の目線・何気ない雑談が、1on1の深度を決めます。

①目線を合わせる「数秒の承認」

忙しくても一瞬でいい。

目を見て「あとで聞かせてね」と返すだけで、相手の存在が尊重されます。

“時間の長さ”ではなく“意識の向け方”が信頼を生むのです。


②雑談は「無駄」ではなく「信頼の投資」

雑談の中には、価値観や人となりのヒントが詰まっています。

仕事以外の話題を共有することで、心の距離が自然に縮まります。


③承認は「行動」ではなく「意図」に向ける

結果を褒めるより、「なぜそうしたのか」に光を当てる。

「先に準備してくれてたね。相手を思って動いてくれたのが分かったよ」

そんな一言が、相手の自信を静かに支えます。


④感情の受け皿をつくる

「そんなに気にしなくていいよ」よりも、「そう感じたんだね」と受け止める。

感情を否定しない姿勢が、相談の連鎖を生みます。


5.“信頼して見る”ことは、“見極める”ことでもある

①適材適所を育む、観察と対話のリーダーシップ

信頼や対話を重んじるリーダーシップは、「全員に寄り添う」「全員を同じように扱う」と誤解されがちです。しかし実際のチーム運営においては、メンバーそれぞれの特性・強み・限界を見極め、最適な場所に導くことこそがリーダーの腕の見せどころです。

どんなに良いチームでも、その瞬間の役割やスキルセットに合わない人は必ず出てきます。それを「成果が出ない人」と決めつけるのではなく、“まだ力を発揮できる場所にいない人”として捉える視点が重要です。

リーダーの役割は、その人を責めることではなく、「どこで活きるか」を見つけること。それは「優しさ」ではなく、戦略的な洞察力です。

②観察と対話で“適材適所”を見つける

この“見極め”は、評価会議や数値だけでは見えてきません。日常の雑談や1on1、何気ない反応の中にこそ、その人の“伸びる方向”や“違和感のサイン”が現れます。

どんな話題で目が輝くか。どんな時に苛立つか。何を大事にしているか。その一つひとつが、人を活かす配置判断のヒントになります。

信頼とは、ただ受け入れることではなく、その人の本質を見抜き、最も力を発揮できる場を共に探す勇気でもあるのです。


6.「そんなに甘くない」と感じるあなたへ

信頼と成果は両立する。「対話が大切」「信頼を育む」

そう言われても、現場のマネージャーの中にはこう感じる人もいるでしょう。

「うちは結果がすべて。そんな理想論で成果は出ない」

「優しくするだけではチームは動かない」

この感覚はとても自然です。

なぜなら、私たちは長く“指示・管理型”のマネジメントで成果を出す構造を学んできたからです。

しかし、いまの組織が直面しているのは、「指示が届かない時代」。情報も価値観も多様化した中で、“納得なき行動”は長続きしません。リーダーが成果を出すために必要なのは、「言われたから動く」ではなく、「自ら動きたくなる」状態をつくること

人は、細かい指示ではなく、信頼と責任の実感によって最も動きます。信頼を感じることで、人は責任を内側から引き受け、自らの力で役割を果たそうとします。それにより、上司の指示や監督の量は減り、チームは自走し始めます。

信頼は理想論ではなく、最も再現性の高い成果モデルなのです。


7.リーダーとは、成果を“管理する人”ではなく“信頼を設計する人”

これからの時代に求められるリーダーは、「どう管理するか」ではなく、「どう信頼を設計するか」を問われます

信頼を基盤にしたチームは、

  • ミスを隠さない

  • 意見を出し合える

  • 責任を共有できる

という“高生産性の状態”に自然と移行します。

これは「優しさ」ではなく、戦略的な信頼設計です。


8.1on1とは「人間関係のリーダーシップ」である

1on1はマネジメント手法ではなく、リーダーシップの在り方そのものです。

リーダーとは、人を動かす人ではなく、関係性の中に変化を起こす人。

1on1の目的は、相手を変えることではありません。関係性そのものを変えることで、相互の成長を起こすことです。制度や方法論に依存するのではなく、一人ひとりが「対話を文化として持つ」意識を持つことが、これからの組織に求められるメンタリングリーダーシップです。


【メンターとして大切にしたい“もうひとつの視点”】

ここに書かれていることを、すべて完璧に実践しようとしなくても構いません。大切なのは、「いまの自分にもできそうな一歩」を見つけること。メンター自身が無理をしすぎたり、「こうあるべきだ」という理想を抱えすぎると、対話の自然さが失われてしまいます。

本当のメンタリングは、相手を支えると同時に、自分も揺れ、学び、成長していくプロセスです。つまり、あなた自身も“メンティ”なのです。完璧である必要はありません。誠実に向き合うこと、それを続けることが、やがて確実に組織に変化をもたらします。


【最後に】

今、あなたが“難しい”と感じるということは、あなたが関係性を大切にしている証でもあります。1on1とは、教える場でも、評価する場でもなく、お互いの存在を尊重し合う場。その関係性の中に、静かに、でも確かに、人も組織も成長していきます。

“信頼”とは理想論ではなく、最も生産性の高いマネジメント戦略です。

そして、「信頼して見る」ことは同時に、“その人をどう活かすか”を考え続けること。

あなたが誰かと丁寧に向き合うその一瞬が、組織を静かに、しかし確実に変えていきます。






 
 
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