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次の時代を拓く

 あらゆるものがインターネットでつながるIoTや、人工知能(AI)技術の実用化により、今後、デジタル革命が急速に進むことから、すべての企業は、生き残りをかけて、この急激な環境変化に機敏に対応し、進化していかなければならない状況にあります。

 一方で、このような環境変化への対応とともに、将来における社会、企業の発展を深く考え、次の時代を拓くため、大きな投資や変革を行うことも忘れてはなりません。


 大阪の街を北の梅田から南の難波まで南北に貫く御堂筋という大きな通りがあります。この通りは浄土真宗本願寺派のお寺である北御堂と浄土真宗大谷派のお寺である南御堂が道に面していることから、江戸時代の初めから御堂筋と呼ばれていました。この通りは約80年前に拡幅する以前は、幅6mの狭い通りでした。

 

 これを幅44m、長さ約4kmに延ばし、さらに、地下に地下鉄を走らせたのは、大阪の100年先を見据えた当時の関市長の構想でした。そして、1926年(大正15)に着工し、11年という時間をかけて、1937年(昭和12)5月に完成しました。


 この工事中、大阪市民は「市長は街の真ん中に飛行場でもつくる気か」と大変驚いたそうです。また、当時は、関東大震災の影響から国に十分な援助を受けられなかったため、御堂筋は道路の拡幅後に沿道の企業や商家にどれだけの利益が生まれるかを算出し、その額に応じた税金を前もって納める「受益者負担金制度」により財源を確保したそうです。


 さて、私たちがよく使用するA4の用紙の縦と横の比率をご存じでしょうか。

A版は19世紀末のドイツの物理学者オズワルドによって提案されたドイツ工業院規格で、現在はISOの国際規格になっていますが、A版の用紙はすべて縦と横の比率は1対√2(約1.414)です。この比率は、人が見て最も美的調和感覚を得られるとされる、長方形の比、いわゆる黄金比である1対1.618に近い値となっています。

 御堂筋の沿道のビルの高さは長い間、100尺(約31m)に揃える制限が設けられており。この高さ道幅との比率は、まさに1対√2の比率でした。


 その後、高さ制限は廃止されましたが、現在も建築低層部の50m規制と「御堂筋デザインガイドライン」により、美しい景観が守られています。

 関市長の御堂筋の大改造計画は、完成から約80年経過しましたが、大阪の街に豊かで上質な賑わいを生み出し続けています。

 この功績をたたえるため、関市長の銅像が中之島公園に建立され、現存しています。



< 文 奥井 泰弘 >

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