今回は、筆者が20代の頃に世話になったような「自然発生的な社内メンター」がなぜ消えつつあるのか考えてみたい。
人事の最前線に立っていた頃には、これは時代、世代の問題であると強く感じていた。つまり、「若いスマホ世代は人間関係に冷淡で、関係構築が下手。そして先輩・上司は、すぐハラスメント呼ばわりされるくらいなら、積極的に若手と関わろうとしないからだ」、と考えていた。「俺たちの頃は違った…」と。
しかし、最近、一線を退いた筆者に相談に来る若手が増え、少し違うのではないかと考えるようになった。
「何故、企業文化も経営方針も現在進行形で共有していない、一線を退いた自分に聞くのか?
そんなこと周囲にいくらでも相談相手がいるだろう」と感じることが多い。
一方で、私が以前居た会社の経営は、現在、その方向性がやや混迷していることも事実だ。
この結果、「経営、組織運営の責任者たちが、会社組織の方向性を社内に説明しきれていないのではないか、それが社内メンターの存在を阻害している」と、筆者の考えは反省を込めて変化している。
例えば企業内労働組合というのは、職場の小さな声を丹念に拾い集め、拡声器のようになって経営にぶつける。
組合幹部はその問題について経営と突っ込んだ議論を行い、その結果を組合員に分かり易く説明していく。
その過程で組合の先輩たちは、メンター的な役割を果たすことも多かった。
もちろん一部の組合では、活動が政治化し、いわば間違った社内メンターの巣窟となった側面もある。
その組合活動も、低成長下、経済的な果実がなくなるにつれ低迷している。
こうした仕組みが機能しなくなる中、経営環境の変化が進み、経営自身が明確な方向性を組織に浸透させることができず、メンターとして機能できるような中堅社員が不足しているではないか?
もし自社内でその機能が失われていると感じたら、経営の責任者、経営企画や人事に携わる方々は、是非、胸に手を当てて自身に問うて欲しい。「この会社の方向性を把握し、組織全体に浸透させているか」と。
そして、その具体的な対策を講じなければならない。それは社外メンターだけではあるまい。
<文・金融、経営管理アドバイザー 博雅>
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