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テレワークで生産性は上がるのか?


コロナウィルスは「働き方改革」を後押しするような副作用を生んでいる。勤務時間の柔軟化、BCP体制の整備など、総務人事部門に仕事が押し寄せている。テレワーク推進もその代表例。我が国は導入が遅れていると言われるが、本当の問題はシステム設備ではなく、自社の事務フローがこうした仕組みに馴染むか否か。


よって事務企画部門は短時間で必死にこれを考えさせられている。この点を理解できていない経営陣が多いこともよくある話で、現場は悪戦苦闘している。


テレワークで通勤や勤務が柔軟に運用できるので生産性が上がる、といったセールス・トークも頻繁に聞かれる。


筆者は、それは企業文化次第、と考えている。因みに、現場に行かなければならない、といった物理的課題を導入の障害として前面に出す論調もあるが、本質論ではないと考えている。


テレワークによる仕事のポイントは、どのように仕事を管理できるか、にかかっている。厳しい表現ではあるが、ある種のノルマが管理しやすい業務には向いている。そして、一方的にこれを指示する側にも向いている。


米国をはじめとする海外企業でこれが可能なのは、一方的に指示する経営陣と、一方的に指示されたとおりに動く従業員に、組織が概ね分解できるからである。経営は自身の責任でこれを指示する。よって、経営の専門家であり給料はとてつもなく高い。


従業員は指示されたとおりに動くだけなので、経営への参画はなく、給料は安い。


日本企業の多くは、現場の意見を吸い上げつつ、合意しながら効率的な組織運営を築く。QCやカイゼンは、まさにこの発想。


よって、経営と従業員の賃金格差は小さく、中間管理職が多く、サラリーマン社長が生まれる。


テレワークを推進すれば、経営と従業員は分離され、中間層は不要になるので意思決定は速くなる。ただし、従業員は経営に関することや現場の企画機能は自身で学ばなくてはならない。OJTなどあり得ないし、賃金格差は広がる。


その結果、生産性が上がるかどうかは個別企業の問題だ。テレワークがBCPの手段としての位置づけに留まる企業があるのは当然と思う。




<文・金融、経営管理アドバイザー 博雅>

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